中国の最新トレンドやビジネス事情を、中国インバウンド事業に従事する2人の営業マンが発信する「はじめてのインバウンド」。第6回目はここ数年中国からの観光客が増えている北海道エリアを探索。“選ばれる観光地”には何が必要なのか、どんな施策を実施しているのかを探りに行きました。
見どころ盛りだくさんの北海道。訪日中国人が観光するのはどこ?
片倉:やったー!!札幌――――!!食べるぞ遊ぶぞ食べるぞー!!
道明:はしゃぐ気持ちはわかりますが今回の旅の目的も忘れちゃいけません。今日は今多くの中国観光客が訪ねているスポットを巡り、その人気の秘訣を探る旅でもあるんです。ちょっとあそこを見てください。
片倉:なに?
道明:札幌駅を出たらすぐの横断歩道を渡ると目の前にある「ファイターズビジョン」で「馬蜂窩(マーフォンウォ)」の15秒CMが流れてるんです。この「馬蜂窩(マーフォンウォ)」を見て、北海道に来る中国の方も多いみたいですね。
片倉:あ、本当だ。でも中国語で何言ってるのかわかんない。
道明:中国の方は異国の地で母国語を聞くことができて安心してくれるはず。
片倉:なるほど。
道明:今回の旅の案内人はこの方。北海道で産まれ北海道で育ち、今も北海道に勤めている北海道ラバーな日北交通の運転手・若山さんです。
若山さん:今日はよろしくお願い致します!札幌付近の名所はだいたい行き尽くしています。
片倉:心強い……!
道明:じゃあ若山さん、さっそく中国の方がよく巡る北海道の名所を案内してください!
若山さん:お任せください。
片倉:道明のそんな眩しい笑顔初めて見たよ。
あっちもこっちもドラッグストアだらけ!観光ナイズされた巨大商店街
若山さん:まずは札幌駅から車で約8分の「札幌狸小路商店街」。ここは、札幌市中央区の南3条と2条を横断する巨大商店街です。
片倉:すごい。アーケードが永遠に続いている。
若山さん:商店街には約200軒もの店舗が並び、訪日観光客向けの店舗が多く営業しています。
道明:確かに「免税」や「電子決済対応」などのポスターが貼られている店舗が目立ちますね。そしてドラッグストアがかなり多い。
若山さん:これでも一時期よりかはだいぶ減ったんです。とはいえ今もひとつのアーケード通りに一店舗は必ずドラッグストアがありますよ。
片倉:日本のあらゆるドラッグストアチェーンと出会える商店街……。日本の化粧品や日用品の需要の高さが伺えるね。
「二条市場」では、蟹を空輸で自国へ送る訪日観光客が続出
若山さん:お次は「二条市場」。札幌駅から車で8分程とアクセス良好な市場です。こちらも多くの訪日観光客の方々をご案内していますね。
道明:鮮魚も勿論ですがホタテや蟹など、北海道ならではの海鮮が揃っていますね。
若山さん:質のいい蟹が安く手に入るスポットとしても有名です。中国の方も一度にたくさんの蟹を買って空輸で自宅へ送るようですね。
片倉:市場の敷地内には飲食店もあるんだね。あ、海鮮丼!
若山さん:こちらの「二条かに市場」では、蟹以外にも新鮮な海の幸を堪能できます。観光客の方が来店してる様子もよく見ますね。
道明:わかります。「北海道に来た!」感が一瞬で満たされますもん。
片倉:わー!!豪華すぎてバチが当たりそうな丼が来た!!
店長:こちらは通年人気の丼です。ボタン海老は、通常大きくても2Lサイズが主流ですがうちでは3Lをご提供しています。身が厚くてプリプリですよ。
道明:確かにお祝いの席でしか見ないサイズですね。これは映えそうですね。写真を見たら食べに行きたいと思う中国の方も多そう。
店長:ほかにもウニや本マグロ、帆立、ハラスなどを贅沢にお乗せしています。
道明:こっちは、自然が創り出す芸術品のような丼です。
片倉:やたら詩人だね。
店長:ウニは甘くてクリーミーな利尻産を使用しています。蟹は毛蟹や花咲蟹、ずわい蟹のほぐし身をミックスしているんです。
片倉:ひとつの丼に3種の蟹が乗ってるんだ。
店長:実は、当店は蟹の卸会社と繋がっているんです。道内に展開する回転寿司チェーン「根室花まる」にも蟹を卸しているんですよ。
若山さん:北海道の回転寿司はすごく美味しいんです。中でも「根室花まる」は、平日も待つことが多い人気店ですね。これはあくまで僕の主観ですが、銀座でひと皿3,000円レベルの寿司が北海道の回転寿司では500円で食べられます。
片倉:北海道のチェーン寿司店、決して侮ってはいけない……。
映えスポット盛りだくさん!食べて学んで遊べる「白い恋人パーク」
若山さん:北海道のお土産として有名な「白い恋人」の工場見学やお菓子作り体験ができる「白い恋人パーク」にやって来ました。
片倉:あの「白い恋人」のテーマパークなんてあったんだ……!
楊さん:ようこそいらっしゃいました、「白い恋人パーク」の楊です。
道明:ここは中国の方も多くいらっしゃってるんですか?
楊さん:そうですね。今年7月に行ったリニューアル後の集計では、全体の3割が海外からの観光客の方々でした。そのうち半分が中国の方です。訪日中国人だけで4万人の方にいらしていただいていますね。
道明:中国の方の割合が高いんですね。
楊さん:はい、5年前と比べると2倍にも増えています。
道明:5年で2倍……?何かきっかけはあったんですか?
楊さん:2016年まではツアーなどを利用した団体観光客の方々が多かったのですが、それ以降は個人観光客が増えたんです。
片倉:あ、さっきの「二条市場」でも同じ現象が起こってるって聞いたな。
楊さん:「馬蜂窩(マーフォンウォ)」など旅行サイトの口コミ情報が増え、旅行の行き先も細分化してきたんだと思います。
道明:ネットから「自分が本当に行きたいと思えるところ」をリサーチした上で、旅の日程を組む人が増えてるんですね。
片倉:そっか。良さげなツアーを選ぶ時代から、旅先を自分好みにカスタマイズする時代に移行してるんだ。
道明:訪日観光客の方の「白い恋人パーク」内での楽しみ方は、何か変化はありましたか?
楊さん:以前までは「爆買い」という言葉が流行っていた通り、館内の「ショップ・ピカデリー」でお買い物をするのがメインの楽しみ方だったと思います。
片倉:「白い恋人」も爆買いされていたのかあ。
楊さん:現在は個人の観光客として自由に館内を周ることができるので、買い物だけでなく飲食や体験コーナーを楽しむ方が増えていますね。
道明:自由に使える時間が増えたことで、旅の楽しみ方も多様化しているわけですね。
中でも訪日観光客の方々に人気のエリアはどこなんでしょう?
楊さん:これからご案内していきますね。
個人観光客が増えた現代は「体験が楽しめる観光地」がキーワード
楊さん:こちらは「白い恋人」を作っている工場です。ガラス越しに「白い恋人」の製造工程を見ることができるんです。
道明:「本日の製造個数」まで見られるんですね。今日の現時点で約18万個の「白い恋人」が生み出されてきたのか……。
楊さん:2017年の6月までは「白い恋人」は全てこの工場で作られていたんですよ。
片倉:ずっと見ていられそう……。
楊さん:お次は、「スイーツワークショップ・ドリームキッチン」。ここは、約14cmハート型の「私の白い恋人」など、世界にひとつだけのお菓子作りが体験できるコーナーです。
片倉:すごい!両方向から風が吹き出して、洗車中の車の気持ちになれる!
道明:この風を中国の方も感じているのか……。
楊さん:「私の白い恋人」はクッキーの生地をすり込む工程から始まり、チョコレートをサンドしたりと「白い恋人」の制作過程をご自分で体験することができます。クッキーにチョコペンでお絵描きもできますよ。試しにいかがですか?
道明:では、弊社を代表して私が。
片倉:主語が大きいな……。何て書くの?
道明:せっかくなので、2人の名前を描きたいと思います。
片倉:なにこれ?ダイイングメッセージ?
道明:真ん中にハートを描けば可愛くなるのかな……。
片倉:最後に吹き出した、なくなりかけのマヨネーズみたいになっちゃったね。
楊さん:チョコペンが固まったら袋詰めして箱に入れ、お渡しいたしますね。
片倉:こんな大きな「白い恋人」見たことない。
道明:これは記念になりますね。お子さんとの思い出作りにも一役買ってくれそう。
菓子メーカーならではの絶品スイーツに訪日観光客に人気のお土産
楊さん:パーク内には、飲食が楽しめるレストランやカフェなども設けられています。こちらは、人気のスイーツ「白い恋人ソフトクリーム(レギュラーサイズ・350円)」です。
片倉:「白い恋人」尽くしだ……!バニラもチョコも濃厚でコクがあるのに後味がすっきりして食べやすい!
道明:これは必食ですね。
片倉:やー、遊んだし食べたね。
道明:その土地の銘菓をエンタメに富んだテーマパークとして昇華しているケースは結構珍しいかもしれません。これは中国の方からも人気が高いのが頷けますね。
片倉:パーク内に映えスポットもたくさんあるから、その写真を「馬蜂窩(マーフォンウォ)」で見た人は来たくなるだろうね。
楊さん:最後にお土産を見ていかれる方も多いですよ。中国の方もお買い物をしやすいように電子決済も対応しています。
道明:訪日観光客の方から人気のお土産は何ですか?
楊さん:やっぱり定番の「白い恋人」は売れ筋ですね。それ以外にもパーク内でしか手に入らない「プルミとラムルのチョコレート物語(1,296円)」や「クッキーBOX(756円)」も人気です。
道明:パッケージも可愛い。ネットを通じてパッケージも伝わるからデザインも重要ですね。
片倉:全部買って帰りたい。
環境を活かした観光名所づくりが成功している「さっぽろ羊ヶ丘展望台」
片倉:ここは……どこ?
若山さん:ここは札幌駅から車で25分ほど走ったところにある「さっぽろ羊ヶ丘展望台」です。特に雪が降る時期に開催される「羊ヶ丘スノーパーク」が訪日観光客の方から人気なんです。
道明:自国で雪が見れない方は印象深い思い出になりそうですね。
若山:話によると、大人の方も大はしゃぎされるみたいですよ。
片倉:雪は自然から贈られる観光名物なのか……。
片倉:人生でクラーク博士と写真が撮れる日がくるとは思わなかった!
道明:きっと中国の方もこのポーズで撮影されてるんでしょうね。僕らも「少年よ大志を抱けポーズ」きめましょう。
若山さん:今年は過去10年の中でも一番の集客だったみたいですよ。40万人の来場者数のうち7%が中国や香港、台湾などアジア諸国から観光に来た方々だったみたいです。
道明:集客が伸びた理由は何だったんですかね?
若山さん:「羊ヶ丘スノーパーク」のほか、大型連休となったゴールデンウィークに合わせて「羊の毛刈り」や「連凧揚げ」などのイベントを行ったみたいです。
道明:羊の毛刈り……中々できない体験ですね。
若山さん:また今年が60周年だったこともあり「60周年ウィーク」と称して「ひつじレース」や「肉カーニバル」などを企画したようですね。
片倉:羊のレースを見たあとに、ジンギスカンを食べる……。シュールな体験だね。
道明:中国の方なんかはもともと色んな種類の動物を食べる習慣があるので問題ないかと思います。
片倉:そっか。
片倉:でも、そもそもなんで「さっぽろ羊ヶ丘展望台」にはあんなに羊がいたの?
若山さん:以前からここは農業研究用の羊を育てている土地だったんです。戦後に見学者が増え、観光地として開拓したようですね。
道明:もともとそこにあった環境をイベントなどを企画し、観光名所として展開しているのが「さっぽろ羊ヶ丘展望台」なんですね。“観光”とは何たるかを考えさせられます。
多様化する訪日中国人の観光ニーズ。多種多様な需要に応えられる情報発信が重要
中国の観光が団体旅行から個人旅行にシフトしている現在、「そこでしか体験できない各観光名所の見どころを発信する」ことの重要性が理解できた北海道の旅。
訪日観光客がネットで旅先のリサーチをする際に「ここに行きたい!」と思ってもらえるような情報や写真を海外に届けることが、インバウンドを成功させる鍵のようでした。
次回は、道明も登壇する「中国個人旅行客の集客ノウハウ公開セミナー」の様子をレポート。最新の中国インバウンドマーケットや誘客方法を詳しくお伝えしていきます。