中国の最新トレンドやビジネス事情を、中国インバウンド事業に従事する2人の営業マンが発信する「はじめてのインバウンド」。
今回は前回に引き続き、北海道で開催された「中国個人旅行客集客のノウハウ公開セミナー」の様子をお届け。セミナーには営業マンの道明も登壇し、現在のインバウンド市場や中国旅行客の動向などについてお話ししました。
インバウンドの観光客を取り入れることが北海道の課題解決の糸口に
登壇するのは株式会社インサイトに勤める栗城裕介さん。「北海道における中国にインバウンドの重要性と可能性について」をテーマに話を展開します。
栗城 裕介(くりき・ゆうすけ)
北海道北見市出身。2017年に北海道を中心に広告代理事業を担う株式会社インサイトに所属。東証一部の上場企業からローカルな商店までウェブを活用したコンサルティングを行う。
(トークの概要)
- 現在、北海道が抱える課題
- 北海道におけるインバウンド市場
- 中国のネット事情。日本との違い
- 企業がインバウンドを取り込むために
現在、北海道が抱える課題に共通する「人口の減少・流出」
栗城さん:まずは北海道が現状抱えている問題についてお話しさせていただきます。現時点で浮上しているのが、復興事業や医療福祉サービスの低下、雇用機会の減少、一次産業の担い手不足。それらの共通の課題が人口の減少・流出です。
現在の北海道の人口は約528万人。来年になると更に10万人減ると予測されています。そして2025年には496万人、その20年後のは419万人と、どんどん人口が減少していく想定がされています。
栗城さん:では、なぜ人口減少が起こるのでしょうか。理由は大きく分けて2つ。社会減と自然減です。現在、北海道から転出する人口は全国1位となり、出生率は全国で最下位を記録。その2つの原因として考えられるのが経済的理由です。
ですが、企業による経済的理由はインバウンド需要を活用すれば解決するきっかけになるのではないでしょうか。
北海道には観光資源という武器があります。国外からの需要を取り込む体制はすでに整っている。この観光力で経済効果を波及・拡充していくことで、人口減少や雇用の機会損失を防げるのでは、と思っています。
北海道のインバウンド市場は右肩上がり。リピーターは体験を好む傾向に
栗城さん:次に、インバウンド市場にフォーカスをあてていきます。北海道を訪れる海外の観光客数は順調に右肩に上がり、昨年は311万人。
滞在宿泊延べ数を見ると、中国が204万泊と他国を圧倒した数字を記録しています。この中国観光客が日本にもたらす経済効果は推定1,600億円以上(※2018年度)にも昇ると言われているんです。
では訪日観光客は日本でどんな過ごし方をするのか。それは初めての観光と2回目以降の観光で異なります。
北海道を初めて訪れる訪日観光客は買い物や日本食を楽しみ、リピーターは体験に消費する傾向があります。そんな中、集客するためにはまずターゲットを絞ることが重要です。
日本で当たり前に利用されているネットサービスは中国では使えない
栗城さん:中国はアメリカを超えてIT大国に成長しています。インターネットの普及率もめちゃめちゃ高い。中国の人口が14億人に対し、約8億人がスマートフォンやモバイル端末を使ってインターネットを利用しています。
栗城さん:ですが、中国のインターネット市場では日本では当たり前に使われているGoogle、Instagram、Facebook、YouTube、Yahooなどは一切使えません。
検索エンジンにはBaidu(バイドゥ)、動画を見るのはYouku(ヨウク)、SNSはWeibo(ウェイボー)やWeChat(ウィーチャット)が主流。旅行メディアは馬蜂窩(マーフォンウォー)が断トツで見られていますね。
企業がインバウンドを取り込むためにできること
栗城さん:それらのサイトを通し、情報発信や記事の作成をしていくことでフォロワーを増やし人気度を上げることは企業努力でも叶うと思います。
更にファンを獲得するためには公式アカウントの取得や有料広告、KOLと呼ばれるインフルエンサーと協働した戦略が必要です。
栗城さん:それらの他に、インターネット活用以外に重要になってくるのがモバイル決済の導入です。というのも、中国のモバイル決済市場は約2,600兆円という想像の付かないほど膨大な市場が存在しているんです。
実際に中国では携帯と身分証・銀行口座が全て紐づけられ、今や現金や財布を持たない文化が浸透しています。
まとめると、中国からのインバウンドを取り入れるポイントはこの3つ。
- 中国の文化と国民性を知る
- インターネットを通じた情報発信
- 決済サービスの導入
原資が生まれることで、企業の福利厚生の充実や給料のアップ、ひいては雇用機会や事業拡大などに繋がるのではないでしょうか。外需を上手に取り入れることが北海道が持つ課題解決の近道になると思っています。
中国個人旅行客の集客を獲得するための馬蜂窩(マーフォンウォー)活用術
次に登壇するのは「馬蜂窩(マーフォンウォー)連携記念。中国インバウンドのノウハウ公開」をテーマに話す株式会社インタセクトの道明。通常回とは違い、真面目な表情で真っ当な中国インバウンド事情を語ります。
道明 翔太(どうみょう・しょうた)
健康食品や化粧品通販のシステム開発に従事した後、中国のインバウンド事業に携わる。電子決済の提案やインバウンドに従事。
(トークの概要)
- 中国個人旅行客の旅行スタイルの変化
- 馬蜂窩(マーフォンウォー)とは
- 馬蜂窩(マーフォンウォー)活用術
中国の旅行客は団体から個人に変化。自らプランを組み立て旅行へ
道明:海外から北海道へ観光に来る中国人の数は年々上がりつつあります。理由は、速やかにパスポートの発給処理ができるよう整備されたり、ビザの申請を勧める国の政策が背景にあります。
道明:更に中国観光客は2017年以降、団体客より個人旅行客が増えてきました。初回の旅行は団体旅行を通して観光し、次回以降は個人旅行でゆっくりと日本を楽しむという流れです。
団体旅行は、限られた時間内での行動が主なため日本の魅力は理解できても疲れてしまうんですよね。だからリピーターが増えた今、自分でプランを組み立てる個人旅行客が増えているんです。
中国で一番見られている人気旅行メディア馬蜂窩(マーフォンウォー)とは
道明:個人旅行客がインターネットを参考にプランを組み立てる際、最も多く見られているのが旅行情報メディアの馬蜂窩(マーフォンウォー)です。この馬蜂窩(マーフォンウォー)は3つのコンテンツで構成されています。
まず1つめは観光地の施設情報が投稿できる「POI」。2つめはInstagramのような感覚で写真とテキストが投稿できる「ショートコンテンツ」。3つめはブログのように観光の感想や情報を投稿できる「ロングコンテンツ」です。
この「ショートコンテンツ」、「ロングコンテンツ」の中には「POI」が紐付けされています。
道明:ちなみに「POI」は一般のユーザーも投稿できるので、トップに表示される画像がその施設の意図しない写真になっていたりもします。
中にはデパートなのに、トップ画像がトンカツの写真になっている、なんてことも。なので適宜、施設側がユーザーに認識してほしい情報に編集することも大切ですね。
また、公式アカウントを持てば「POI」内のリリース機能を使って、キャンペーンなどのお知らせができるようになります。この公式アカウントの「紹介機能」を使えば「ロングコンテンツ」で施設の更に詳しい情報を掲載することも可能になります。
日本の企業が馬蜂窩(マーフォンウォー)を活用するために大切なこと
道明:あるデパートの事例でいうと、まず「POI」の情報を整理したうえで、紹介機能の追加とショートコンテンツの作成をした結果、総クリック数が約10万7,000ほどまで伸びました。
企業側は正しい情報を登録し、ユーザーに興味を持ってもらうきっかけを作ることが重要になってくるのではないかと思います。
そして北海道、中でも札幌は人気のエリアだからこそ圧倒的な情報が馬蜂窩(マーフォンウォー)には掲載されています。
なので、これからPRしたい札幌の施設・店舗の記事を投稿したとしても埋もれてしまうのが現状。そのため、アプリトップページへのバナー広告や特集ページを組むなどの露出を増やす必要もあるのかなと思っています。
中国で個人旅行が増え、旅行メディア馬蜂窩(マーフォンウォー)が多くの人の見られている今、ユーザーが旅行プランをたてるタイミングからアプローチができるようになりました。うまくアプローチするためには……
- POIの情報を充実させる
- コンテンツ内で旅行プランを提案
- 広告を使ってコンテンツを露出させる
が大事な項目になってきます。ともあれ、まずはコンテンツです。目に留まるコンテンツを掲載したうえでプロモーションをかけていくのが中国の観光客を獲得するために重要なのだと思います。
もし飲食店を馬蜂窩(マーフォンウォー)に投稿するなら……
片倉:いやあ〜お疲れ、お疲れ。
道明:中国の方が日本でより楽しめるお手伝いができたと思ったら全然疲れなんて感じませんね。
片倉:無敵だね。それはそうとさ、せっかく北海道まで来たんだからさ栗城さんも呼んで打ち上げしようよ。
3人:かんぱーい!
片倉:ここはどんな店なんですか?
栗城さん:「海味はちきょう 本店」は北海道の名産が堪能できる地元では有名な人気店ですね。
片倉:わ!ザンギって初めて食べる!このシシャモうまっ!なにこれ本当にシシャモ!?
栗城さん:実は一般的に世に出回っているシシャモは「カペリン」「カラフトししゃも」やという「本ししゃも」とは別の種類の魚なんです。「本ししゃも」は肉厚で脂がたっぷり乗っていて美味しいですよね。
道明:そういう情報も馬蜂窩(マーフォンウォー)に書いていけばいいわけですね。
栗城さん:それとここの名物はこれ、「元祖つっこ飯(大・4,650円)」。お店の方が「よいしょー!」という掛け声を発しながら、溢れんばかりのいくらを丼に乗せていってくれるんです。
道明:なるほど。実に馬蜂窩(マーフォンウォー)映えしそうです。
片倉:インスタ映えみたいに言ったね。
道明:ここをもしに馬蜂窩(マーフォンウォー)に書くなら……
「北海道の名産がここに集結!地元の人気店「海味はちきょう 本店」。新鮮な海の幸が一同に会する「刺身の盛り合わせ」(1,980円)や、ジューシーで食べ応え満点の「はちきょう特製なまら鶏ザンギ」(1個・280円)、肉厚で脂が乗った「日高産 本ししゃも」(830円)はどれも必食!そして、ここの名物はなんと言っても「元祖つっこ飯(大・4,650円)」。最高級のいくらをたらふく食べられる夢のような体験が叶うんです。いくらをしゃもじから丼に乗せる度に発せられる店員さんの『よいしょー!よいしょー!』という威勢のいい掛け声と一緒に、旅の仲間と『よいしょー!よいしょー!』と叫べば、唯一無二の思い出になること間違いなし!」ですかね。
片倉:仕事の話、一旦終わりにしよう?
インバウンド集客は変化し続ける中国の市場に合わせたアプローチが重要
拡大し続けるインバウンド市場に、変化する中国旅行客の動向、中国のネット事情などがテーマとなった今回のセミナー。日本の旅行客と共通するのは、ネットを駆使し、旅行情報を集める点です。
日本に旅したいと思っている中国の方に発見してもらうには、まずネットを通し認知してもらうことが先決。そのためにも、ぜひ馬蜂窩(マーフォンウォー)で自社の商品や、施設の魅力を発信してみてください。
さて、今後も「はじめてのインバウンド」では最新の中国のインバウンドに役立つ情報をお届けしていきます。次回をお楽しみに!